認知症の家族が事故を起こしてしまったら… 問われる損害補償
厚労省の国民生活基礎調査によりますと、要介護になる原因で最も多いのが認知症です。あくまで推計値ですが、2012年の段階で認知症高齢者は462万人であったものが、2025年には700万人に達すると言われております。つまり65歳以上の高齢者の実に5人に1人が認知症になると見込まれます。
そして認知症が原因で、警察に行方不明届が提出された数ですが、2019年は前年比3%増の1万7479人で、ここ7年連続で過去最多を更新しました。我が神奈川県において、1593人を数えており全国で4番目の高い数値となっております。
こうした中、認知症の人が事故を起こした際に、本人や家族が高額な損害賠償を求められるケースが増えております。民法では、責任能力のない人が与えた損害は、その「監督義務者」が賠償責任を追うと規定されております。以前、認知症の親が徘徊中に電車にはねられて死亡しました。その際JP側は、その家族に対して運行遅延など約720万円の損害賠償を求めて提訴した事案が思い出されます。
今では一部自治体において、公費で認知症の人が事故を起こした際の救済策として、民間の個人賠償責任保険が導入されております。市が保険契約者となって、保険料を肩代わりし、市民側に負担させないというメニューです。自治体によって異なりますが、原則加入の条件として、行方不明の恐れのある認知症の人が登録し、在宅で生活していることが基本のようです。
今後、益々高齢化が進展していきますので、安心して地域で暮らしていける環境づくりを推進していかなければなりません。もちろん認知症の人であっても積極的な社会参加を促し、介護が必要な状態になることを防ぐことが第一です。財源的な確保が前提でしょうが、そのための一助として、自治体の取り組みを注視していきたいと思います。 コロナに負けるな!