予算の危うさPart③ コロナ禍と言えども、水膨れする予算要求を跳ね除けろ!

 昨日は、予算や決算をめぐる形式的かつ構造的なお話をしました。今回はその予算の中身についてです。例年、各省庁は暑い8月末までに財務省に対して、来年度予算編成に向け、自分たちが行うべく項目についての概算要求を提出します。既に概算要求基準に関しては、本年度当初予算106兆円のうち、各省庁が自由に使い道を決められる裁量的経費(約15兆円)を、一律で10%カットすることになりました。
 ところがその一方で、その削減額の3倍に当たる計4.5兆円規模の「特別枠」を設けて、各省庁からの要求を聞くように配慮しております。この「特別枠」の対象となるのは、①グリーン社会の実現、②デジタル化の加速、③活力ある地方創り、④少子化の克服、の重点4分野です。新型コロナによって落ち込んだ経済の活性化を目指すとありますが、果たしてこうしたテーマにかこつけて、便乗とも取れる要求が増えるのではないか…。少しでも関連性があれば何でも要求することができるのが実態なので、財務省ならずとも心配するのは私だけはないと思います。

 そもそも概算要求を巡る、また予算編成においてより根本的な問題は、相変わらずの前例踏襲主義というもの。今に始まったことではありませんが、事業の必要性が小さいものでも中々統廃合が進まず、各省の局や部門ごとの予算シェアが長年固定化されております。

 例えば、国交省の道路と鉄道の関連の予算配分について、その予算比率は4対1の割合で、10年前とほぼ同じです。また防衛予算でも、これだけ中国の脅威に対して南西諸島の体制強化(海や空の防衛力強化)をすべきなのに、陸上・海上・航空自衛隊への各予算配分はほとんど変わっておりません。

 政権与党や地元の圧力がものすごくて、この固定化した予算配分を打ち崩すことは困難…、こんな恨み節が財務省からも聞こえてきます。各省の部門ごとのシェア見直しに切り込むには、首相自らが本腰を入れて改革に臨むか、さもなくは政権交代による新たな内閣で抜本的に見直すか、どちらかでしょう。

 なお、財政法上、日本は単年度主義ですので、一年間の使い切り予算です。海外では複数年度予算を組み、中長期的な視点から財政計画を立てながら検証を加える仕組みがあります。これによって、効果的かく効率的な予算執行がされるか否かにつき、客観的な評価が行うことが出来るとありますが、日本にはこうした歳出抑制のシステムがありません。

 先進諸国で最悪の財政赤字を抱える日本。古い体質から1日も早く脱却しなければ、お先真っ暗…。ただしこのため(財政法を大胆に切り替えるため)には現在の憲法改正も視野に入れた、本格的な議論をしていくしかないでしょう。 コロナに負けるな!